優待クロス(株主優待のクロス取引・つなぎ売り)には、大きく分けて、一般信用取引を利用したものと制度信用取引を利用したものの2種類があり、前回は、一般信用取引を利用した僕自身の具体例をまとめました。
そして今回は、制度信用取引を利用した優待クロスの具体例についてまとめましたので、ご覧ください。
なお、優待クロスの概要や一般信用取引の具体例について知りたい人は、以下の記事も参考にしてみてください。




優待クロスを低コストで行うには、証券会社が設定している無料枠等を利用することが重要です。
僕のおすすめする証券会社は、以下の3社です↓
②松井証券
※詳しいサービス内容については、各証券会社のサイトをご覧ください。
優待クロスの具体例|制度信用取引によるクロス取引(つなぎ売り)
優待クロスの具体例|朝日放送グループホールディングス
今回、制度信用取引を利用した優待クロスの具体例として取り上げる株主優待銘柄は、毎年3月に株主優待を実施している朝日放送グループホールディングス(朝日放送GHD・証券コード9405)です。
大阪に本社があり、関西圏に住んでいる人にはお馴染みのABCテレビ(テレビ朝日系列)などを傘下に持つ認定放送持株会社です。
この朝日放送GHDの株主優待の内容は、3月末の権利付最終日に株数500株以上保有することでクオカード3,000円分を貰うことができます(株数100以上~500株未満保有の場合はクオカード500円分)

100株以上~500株未満で500円分のクオカードを貰うより、500株以上で3,000円分を貰う方が、断然、お得感がありますね。
なお、クオカードは大手コンビニの他、大手書店、ENEOSのガソリンスタンド、マツモトキヨシ、デニーズなどで利用可能です(一部店舗等を除く)
イオンやイトーヨーカドーといった大手スーパーやホームセンターなどでは利用できませんが、僕のように、普段からコンビニや書店、ガソリンスタンドなどを利用する人には、ほぼ現金に等しいものだと思います。
また、金券ショップへ売った時の換金率も高く、90%以上で売れたりもするので、使わない場合は、そちらに売ってもいいかと思います。
優待クロスの取引日・決済日
朝日放送GHDの優待クロスの取引日は、2022年3月末の権利付最終日より1日前(1営業日前)の3月28日です。
この日の寄付に株数500株を現物取引で購入し、また同時に、同株数を制度信用取引による売り建てのクロス取引(つなぎ売り)をして、優待クロスを実行しました。
なぜ、最も効率がいい、権利付最終日の3月29日に行わなかったのかというと、SBI証券(アクティブプラン)の株式売買手数料の無料枠を活用するためです。
SBI証券のアクティブプランでは、現在、1日あたりの現物取引、一般信用取引(短期・長期)、制度信用取引の3種類の取引それぞれの売買手数料が、約定金額100万円まで無料となっています。
ですので、3月のように株主優待銘柄が多い月に、できるだけこの無料枠を利用しようとすると、権利付最終日当日だけでは枠が足りず、多くの銘柄で取引できなくなります(もちろん、無料枠を気にしなければ、権利付確定日のみに優待クロスすることも可能です)
そこで、特に3月は、計画的に、権利付最終日より数日前から優待銘柄を数日に分けて優待クロスすることで、それらの取引にかかわる株式売買手数料を無料にすることができました。
ただ、その分、制度信用取引の年利1.1%の貸株料という金利手数料のようなものがかかってしまいますが、実際に1日あたりの利息を計算すると、年利1.1%÷365日=約0.003%となり、仮に、100株30万円の株を2日間保有していても、貸株料は18円程しか掛かりません。
そして、朝日放送GHDの優待クロスの決済日、つまり、現渡(信用取引の売り建てを、保有する現物の株式で決済する取引)は、明後日の権利落ち日の3月30日朝に行いました。
↑実際の取引書(現渡)を抜粋
なお、現渡は権利落ち日の取引所が開いているうちに行わないと、余計な経費(貸株料や逆日歩等)が掛かってしまうので、早めに手続きした方がいいです。
また、証券会社によっては、権利付最終日の当日夜に現渡をして株主優待の権利を獲得することも可能ですが、早く現渡してしまうと、場合によっては、株主優待の権利をゲットできないケースもありますので、日付が変わってから現渡した方が間違いないと思います。
優待クロスの利益計算例|制度信用取引つなぎ売りの場合
上の図が、2022年3月末に、朝日放送GHDに対して制度信用取引を用いた優待クロスを実行して得た利益の計算表です。
結論から言うと、現物取引約37万円の投資額(他に一般信用取引の売り建ての投資額が約11万円)に対して、+2,919円の利益となっています。
ただ、この中には、今年度の株式売却損失計上による配当金の税金還付分1,700円(予定)が含まれていますので、これを除くと+1,192円の利益となります。
利回りで言うと、約0.8%(税金還付分を除くと0.3%)しかありませんが、個人的には、ただ銀行に預けるよりはいいのではないかと思います。
では、それぞれの項目について見てみましょう。
株主優待の金額(価値)
株主優待の金額(価値)は、僕にとっては現金と同等のクオカード3,000円分ですので、そのまま+3,000円の利益としています。
価格下落による損失
優待クロスを行うことにより、権利落ち日の始値時点で予想される価格下落による損失は0円です(寄付前に現渡済み)
ちなみに、2022年3月末は、権利付最終日終値の株価(732円)と権利落ち日始値の株価(708円)の差額が▲24円で、500株購入した場合だと▲12,000円と下落幅は大きい金額でした。
もし、優待クロスを行わずに、権利付最終日の引成に現物取引で500株購入して、権利落ち日の寄付で売却した場合、配当金の収入8,500円(1株17円×500株)を合わせても、下の計算の通り、▲2,200円のマイナスになったと思います。
過去を見ても、2018年~2020年3月末の権利落ち日の株価は▲20円以上の下落で、500株だと▲10,000円以上の損失になっていました。
そのため、配当金収入と優待サービスの権利獲得による旨味は全く無かったどころか、損失になっていたのではないかと思います。
その点、制度信用取引を利用した優待クロスなら、後述の逆日歩を気を付けておけば、確実にプラスに取引できるという利点があると思います。
貸株料
SBI証券の制度信用取引の貸株料(証券金融会社から株を借りるために支払う金利手数料)は、3日前から信用売り建て(つなぎ売り)しているので、以下の通りとなります。
受取配当金
受取配当金による収入は、次の通りとなります。
・配当金8,500円(@1株17円×500株)ー税金源泉徴収額1,727円(配当金の20.315%)=+6,773円
なお、配当金の金額については予定となっていて、6月末に開かれる朝日放送GHDの株主総会で正式に決定しますので、金額が多少前後する可能性も少なからずあります。
配当落調整金
経費として計上される制度信用取引(売り建て)による配当落調整金は、次の通りとなります。
・配当金8,500円-所得税源泉徴収相当額(15.315%)1,302円=▲7,198円
受取配当金の税金還付
年明けに確定申告をする必要がありますが、何年も前から結構な金額の含み損を抱えている株式を保有しているため、これを売却して、株の売買損益と配当金収入の年間収支をマイナスにすることで、前々項にある配当金8,500円の税金1,727円の還付を受ける予定となっています。
ですので、その税金還付分が+1,727円となります(株主総会で確定するまでは見込みとなります)
逆日歩
制度信用取引の売り建てを利用した優待クロスには、逆日歩という貸株の調達費用がかかります。
2022年3月末の権利付最終日の逆日歩は、100株当たり▲265円かかりましたので、今回の優待クロスの逆日歩の計算は、次の通りとなります。
株式売買手数料
まとめ
今回は、制度信用取引(売り建て)を利用した優待クロスの具体例を紹介しました。
実際に、僕自身が2022年3月末に行った優待クロスの具体例で、具体的な銘柄や取引日・決済日、諸経費、利益額、利用した証券会社などについてまとめましたので、少しでも参考になりましたら幸いです。
今回は、クオカード3,000円分の株主優待を紹介しましたが、特に3月末には、こういったクオカードの優待銘柄が数多くあります。
それらの銘柄を、出来る投資資金の範囲内で数多く優待クロスすれば、合計で数万円の利益を出すことも可能ですので、利息が微々たる銀行に預けておくのはもったいないと思う人は、検討してもいいかもしれません。
なお、このブログは、管理人自らの知識と、各証券会社等のサイトで調べた情報や資料等を基に記述していますが、その内容の正確性について保証するものではありません。
これらの正確性を確認したい場合は、ご自身にて、各証券会社や証券取引所等のサイトをご覧いただいたり、また、それらの会社や機関等に問い合わせするなどしてご確認ください。
また、投資判断についても、その情報の正確性をご確認いただき、自己責任にて行っていただきますよう、お願いいたします。

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